atoiuma’s blog

人生あっという間。マイペースにおもしろく。

ミッション、パッション、ハイテンション!

79冊目。

 齋藤孝さん3連続。この人の本には熱があって、人を引き寄せるものがある。

 

まず、ネーミングが素晴らしい。ミッション、パッション、ハイテンション!俄然興味が湧いてくるタイトルだ。

 

使命を持って(ミッション)、情熱を持ち(パッション)、上機嫌で(ハイテンション!)で働けばやる気モリモリ怖いものなしだぜ!という本。まさに今の私に必要な処方箋だ。

 

一番響いたのは、ネガティブな経験を原動力にして突き進むパッションの項目。著者は東大を卒業し、大学院に進んでいる。学歴の最高峰であるが、しかし彼には32歳になるまで定職がなかった。いくつも論文を書いても評価されないし、手応えなし。市場価値はなく、影響力もない。しかもこの時点で子供が2人いた。

 

この時代に、彼は多くの理不尽や社会の残酷さを身を以て知った。学歴でバカにされることは当然なかったが、定職がないと家が借りられない。家賃を払えると説明しても、不動産屋に足元を見られる。これが屈辱的だったと語っている。知性も教養もあって、人として恥ずかしいことはしてない。でかい論文を発表して社会に影響を与えてやろうという野心もある。しかしそんなのは無視されて、雑な扱いを受ける。ふざけるな!

 

不完全燃焼が溜まりに溜まり、世の中全体を恨むようになっていた。犯罪一歩手間のメンタリティといってもよかった。p.20

 

 

現在、著者は明治大学の教授であり、テレビにも出演、大量の本を出版して精力的に活動している。その膨大な活動量の奥には、そんな不遇時代に蓄積されたネガティブな経験がある。これが深く熟成してパッションへと転換され、本人曰く、100歳になるまで尽きることはないと。

 

こうやってネガティブからパワーを生み出している人は他にもいて、例えば日本のロックスター永ちゃんがそうだ。貧乏な子供時代に、近所のボンボンから「ケーキを食べさせてやるよ」と投げつけられた。こんな腹が立つことはないが、しかし彼は自分の服についた生クリームを口にしてしまった。その時の屈辱感。

「絶対にお金持ちになってやる!!!!!!!」

結果はみんなが知っての通りである。

 

だから、著者は言う。癒しを求めたり傷つかないようにするのではなく、しっかりとそのネガティブを脳裏に焼き付けろ。そしてそこからパッションを汲み取って生きていけと。パッションには情熱の他に「受難」という意味も含まれているのだ。苦しみや不遇の中から奮起することがパッションだ。

 

他にもこの本には心を動かされるシーンが多くて、たくさんのページを折り込み、線を引いた。長い不遇を味わった著者の言葉には重みがあるし、共感できるところが多い。自分の中でまだ言語化できていないところをズバッと指摘されると、痛みとともに爽快感があった。そうか、俺のストレスは「エネルギーが循環せず、身体が湿り切っていることへのいらだちと焦燥感」なのかもしれない。「エネルギーの循環」とは前冊「上機嫌の作法」にも出てきたキーワード。しっくりくる表現だ。なんとなくノリで始めたこのブログがなんやかんやで続いているのは、ここでエネルギーを吐き出しているからかもしれない。

 

最後に、もういっちょ引用。

社会の中での自由とは、束縛がないことではない。社会の中で、他者に働きかけていける技を1つでも2つでも持っていること、これが真の自由だ。 p.20

 

学びの多い1冊。何度も読み返すことになると思う。働きたくない人、行き詰まってイライラしている人、元気が欲しい人にオススメ。巻末にある梅田望夫さんの解説も素晴らしいです。