atoiuma’s blog

人生あっという間。マイペースにおもしろく。

タイの小説

81冊目は初の小説。

パンダ (物語の島 アジア)

パンダ (物語の島 アジア)

 

 

プラープダー・ユンさんというタイ人が書いた小説。そう、これはタイ文学だ。タイ好きとして興味があったので読んでみた。ちなみに、ネタバレあり。

 

主人公は冴えない27歳のタイ人男性。丸々と太っていて、慢性的な睡眠不足から目の下に黒いクマがある。親も含めてみんな彼を「パンダ」と呼ぶ。

 

エロ映画会社で働く無気力な生活を送っていた彼は突然、「自分の惑星」からの声を聞く。どうやらパンダは生まれる惑星を間違えたらしい。地球ではない別の惑星が自分の故郷だと知ったパンダは、帰る準備を始めるんだけど。。。

 

ざっくりこんなストーリー。

 

舞台がタイだけあって、シーロムやトンローなどの地名、タイ警察にぼられる話も出てきて面白い。全体的に柔らかい文体で書かれてるので読みやすくもある。昨日の深夜から読み始めてあっという間に読了した。

 

ここからネタバレ。

 

最終的に彼は自分の惑星に帰ることに成功する。しかしそれは、物理的なものを意味しない。列車の中で気を失い、病院に運ばれ医者が治療の手を尽くしても応答がなく、誰もが死んでしまったと思った時、彼は蘇生した。一回死んだことが帰郷したことになっている。そして彼は精神が満たされていることを感じ、新しくできた彼女とともにハッピーライフを歩んでいく。

 

結局これどういうことかって、世界は気に入らないことや汚いことに溢れているけれど、それを相手にしないで自分の美意識や理想を持って生きようぜってことだと解釈した。パンダはタイ政府や資本主義社会、身近な人間たちなど多くの対象に不満を抱えている。そんな社会にうんざりしているけれど、自分が他の惑星出身だとわかったことで、彼は癒された。だって、俺、ここじゃないもん。本当の理想郷は別にあるんだ。なーんだ、じゃあもう少しの辛抱じゃん。

 

てっきりどっかに飛んでいくのかと思いきや、何も変わらぬタイでの生活。でも内面が変わった。周りに合わせなくてもいい、自分の美意識や理想に生きよう。これは現実の私たちにも応用可能な技術。

 

もうひとつ面白かったのが、冴えない人間が「あと2ヶ月で惑星に帰る」という物語がくっついたことにより、急に主体的に動き出したこと。アクティブになったんですよね。なぜなら、もうこの世界にバイバイしちゃうからどうでも良いことに振り回されなくなるし、失敗の恐怖やら世間体やらからも自由になれるから。で、その動きが良い流れを作って、可愛い女性とデートできたり、仕事で評価されることにもなった。これ面白い。私の好きなドラマに草彅剛主演の「僕の生きる道」があるけど、あれだって胃がんになって余命宣告されたことで人生が大きく変わったわけで。このエピソードから学べることは多いと思う。

 

というわけで、久しぶりの小説、面白かった。ちょっと著者に興味が湧いたので他の本も読めればと。