90冊目。
随分と前に出たベストセラーをチョイス。
本書は悩める青年と先生の対談を通してアドラー心理学が学習できるというもの。
原因論と目的論
例えば、トラウマというものがある。過去の辛い経験が今に悪影響を及ぼしてしまうこと。学生時代にいじめられたから、人が怖くなって引きこもってしまった。このように因果で捉えるのが原因論。
しかし、アドラーはそれを否定する。
私たちは、自分たちの目的に応じて経験に色を付ける。外に出たくない、引きこもることで家族からの愛情を独り占めしたい!その目的を果たすために、いじめられていた経験を引っ張り出し、そこにネガティブな色をつけ、あたかもそれが原因かのように語ると。
さあ、如何でしょう。この残酷さ!これがアドラー心理学。悩める若者も悲鳴をあげます。
でも、もし「原因論」に支配されてしまうと、過去によって現在と未来が規定されてしまうことになる。「昔〜だったから今はこうだし、未来もこうなんです!はい終了!」
これじゃ面白くないじゃないか。いつからだって、今この瞬間にだって私たちは変われるんだ!その立ち位置を手に入れるには、人生は自分の選択によって成り立つという視点が必要。全部自分で選んでいる。だから、選択を変えれば人生はすぐに変化すると。
そんなこと言ったって、厳しすぎるよそりゃ!
そう、だからアドラー心理学は「勇気の心理学」とも言われている。必要なのは、勇気。新しい選択をすること。言うは易し行うは難し。
課題の分離
「すべての悩みは、人間関係である」というのがアドラーの主張。人は皆詰まる所は人間関係に悩んでいる。人と比べて負けたくない、馬鹿にされたくない、孤独は嫌だ、モテたい、好かれたくてたまらない。。。なるほど確かにそうかもしれない。
その苦しみを和らげるために、「課題の分離」を進めている。つまり、相手ってコントロールできないからそこは諦めようぜということ。ある女性を好きになったとしよう。早速データを集めて彼女好みの自分を作り上げたとする。欲しいと言ってたブランド物のバッグをプレゼントしたり、悩み相談にも丁寧に応じた。そして、愛の告白!
でも、それを受けるか受けないかはこっちの範疇ではない。相手が決めること。どれだけアプローチをかけても、最終決定に関してはこちらは何もできない。つまり、課題が違う。最後は相手の課題になるのでこっちはどうしようもないのだ。これが課題の分離。諦めるところはすっぱり諦めて、他者の課題に介入はしない。それが軽やかに生きるコツ。
自由とは、他者から嫌われることである。
最後に、私が一番気に入った表現。
人から嫌われることは誰でも嫌なものだ。できることなら好かれたい。でも、だからと言って、好かれるために自分に嘘をついてはいけない。もし万人に好かれることを実践しようとしたら、あらゆる相手に忠誠を誓わないといけない。そこには必ずほころびが生まれ、信用が失われていく。
大事なのは、自分を生きること。人から嫌われたくはないけれど、嫌われることを受け入れる。嫌われるということは、自分を生きているということ。
自由とは、他者から嫌われることである。
ヒットした理由がわかる本。すごく面白かった。