atoiuma’s blog

人生あっという間。マイペースにおもしろく。

「自分の薬をつくる」を読んだので感想。

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お気に入りの作家の一人、坂口恭平。彼の新作を読んだ。

 

双極性障害である著者が開いたワークショップを元に書籍化したもので、集まったお客さんの悩み相談を、医師役である著者が答えていく過程が書かれている。著者のユーモアとクリエイティブがドカンと表現されていてとても楽しかったし、勉強にもなった。彼の主張と私の経験が重なるところが多かったのも楽しく読めた理由の一つで、そこんとこを書いていきたい。

自分の薬をつくる (日本語) 単行本 – 2020/7/14

 

薬とは、日課である

薬とは何か。言うまでもなく、毎日服用するものだ。

 

では、他にあなたが毎日していることは何か。「睡眠」「歯磨き」「掃除」などなど。これらは「日課」と呼ばれている。

 

つまり、薬とは、日課である。自分の薬を作るとは、自分の日課を作ることである。

 

一見ただの言葉遊びのように思えるけれど、これがかなりすごい力を持っている。著者は双極性障害で、本来は通院と薬の服用が必要だ。ところが、自分の生活をデザインし日課を作り出すことで、現在病院無しの生活を送っている。毎日4時に起き、決まった日課をこなし、夜9時に眠る。それを繰り返すことによって自分自身のコントロールに成功し、状態が安定しているのだ。

 

この「日課=薬」という定義は個人的にすごくしっくり来ている。というのも、今の私の生活が日課によって支えられ安定していることを日々実感するからだ。

 

前にこんな記事を書いた。「満員電車が嫌すぎるから朝4時起き生活にしたら快適だったよ」という話と、「働く日と働かない日があると落差に疲れるから毎日働いてみたらこれまた快適だったよ」という話。

hirosweets.hatenablog.com

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今現在はというと、早起きも毎日労働も継続している。最近は3時起きして出社前にちょっぴりお勉強をしている。仕事は140連勤を突破した。

 

この一見ヘンテコな日課が、とても気持ちいいのだ。そりゃ全く疲れないわけじゃないけれど、大きなストレスや疲労はない。まさかこんな形が自分に合っているとは思いもしなかったが、多分これが私にとっての正解の一つなんだと思う。コロナ禍で海外に行けないという環境だからこそ試せたし、気づけたこと。これからもベースはこんな感じでやっていきたい。こうやって生活を試行錯誤してデザインしていくの、楽しい。

 

適当なアウトプットをせよ

インプットしたら、アウトプットをするのが自然だ。ご飯を食べたらしっかり消化して、ちゃんとトイレで出す。酸素を吸ったら、二酸化炭素を吐き出す。ご飯を食べ続けて便が出なかったら不健康だし、息を吸い続けて吸わなかったら死に至る。人間の体は自然に出し入れをしている。

 

ところが、情報社会に生きる私たちは、実はインプットばかりしてはいないだろうか。スマホを握り締めてsnsyoutube、友人からのメッセージなどを大量に浴びて生きているが、それに対応するアウトプットをしていないのではないか。これって不健康なのでは?

 

しかし、アウトプットはなんだか気が重い。インプットは適当にやるくせに、アウトプットとなると「めんどくさい」「下手にやると怒られるからしっかり準備しなくちゃ」「私の表現なんか誰にも評価されないし。。。」という具合に急に真面目になって引っ込んでしまう。

 

だから、適当なアウトプットのススメ。それで褒められるとかお金を稼ぐとかではなく、便を出すように、息を吐くように、生きるために作り、表現する。実際坂口さんはとんでもない量のアウトプットをしている。毎日文章を書き、絵を描き、料理し、陶芸や編み物、ギターで歌ったりもする。最近は畑に行って野菜も作っている。自殺者を無くすために、自分の電話番号をwikipediaで公表し「いのっちの電話」を一人でやってもいる。凄まじいわ。(ただ、ここんとこのTwitterを見てると、ちょっと躁モードが来てる気がするんだけど大丈夫だろうか)

 

彼には遠く及ばないけれど、私もこのブログやsnsでしょうもない発信をしている。このブログとは別に日記も毎日書いている。日記を書くようになったのは引きこもった後からで、怠け者の私が10年以上も続けているのだからやっぱり気持ちがいいんだろう。そういえば、引きこもり時代の日記には「自己解放!」とか「自分を出す!」とか「息苦しいから表現する!」なんて言葉がたくさん羅列されていた。アウトプット大事。

自閉のススメ

人と会うことは楽しいことだ。でも、毎回会う人が全て自分を受け入れてくれるとは限らないし、調子が悪い時に揉めたり批判されると、グッとメンタルが乱れる。そういう時は、会わない方がいい。坂口さんの場合は、調子が良すぎる時も会うのを控えるらしい。

 

意外だったのは、彼が打ち上げが苦手だったということ。てっきりお祭り好きでガンガン盛り上がるのが好きだと思っていたら、実は少人数でゆったりするのが好きらしい。飲み会はなるべく断るそうだ。夜9時に眠る人だと周囲に認知されたら、誘われることは無くなったらしい。

 

最近では満足した瞬間に「満足したので帰ります」と言って、すぐ席を立ちます。席を立って、その場から離れるととても気が楽になります。 p159

 

なるほど、これは使える!みんなどんどん満足して帰りましょう。

 

私自身も、飲み会にはほとんど行かない。坂口さんと同じように大人数で会うのが苦手なので、基本的にはマンツーマン、多くても4人くらいの集まりにしか参加しない。そんなスタイルでも別に孤独にはならないし、問題はない。

 

コロナになって、人と会う機会が減った。でも、それで特に大きなストレスはない。チャットが出来れば結構満足することがわかった。人と会わないとなると、自然と大きな駅(渋谷、新宿、池袋など)に行く機会も減ったのだけど、これがすごく心地良いことにも気づいた。ショッピングモールで買い物なんてしないし、お酒を飲むわけでもない。元々人混みやざわざわしたところが苦手なので、むしろ日々のストレスが減った。友人宅にお邪魔したり、こじんまりとした駅近くのお店でおしゃべりすることが快適。あるいは、自宅でネットや本から情報を得ることもいい。

 

自閉しつつ、多様な刺激を脳みそに送り込む。 p226

 

はすごくいい言葉だなと思った。

まとめ

面白いだけでなく、実用的で役に立つ処方箋が盛り沢山。やっぱり坂口さんはすごい。膨大な量の試行錯誤とその言語化、そしてユーモアとクリエイティブがある。 オフィシャルなカウンセラーや医師とは違ったアプローチが新鮮で心地良い。まさにアーティストだと思う。いのっちの電話は彼にしかできない。

 

ひきこもり問題を扱っている精神科医斎藤環先生も本書を推薦している。

https://shobunsha.info/n/n17e8ad634717

 

これからは適当なアウトプットを心がけ、どんどん自分を楽にしていきたい。

 

あと、この歌好き。気持ちが軽くなる。井戸の水飲んで〜♫


坂口恭平 "松ばやし" (Official Music Video)